予防歯科って? 従来の歯科治療では、虫歯を削って詰め物やかぶせ物をしたり、歯周病にかかった歯を抜く、というのが普通でした。しかしできることなら削られたり、抜かれたくありませんよね。虫歯や歯周病の原因は口の中に存在する微生物ですから、微生物の数を減らし、微生物の住みにくい状態にしてやれば虫歯や歯周病になりにくくなります。口の中を虫歯や歯周病になりにくい環境に変えて行き、維持していくことが予防歯科です。
プラークとバイオフィルム - 歯磨きだけでは取りきれないやっかいもの
細菌に代表される微生物の量からすると、口の中は最も汚染されている部位、と言えます。例えば耳かき1杯分の歯垢(=プラーク)の中に約10億の微生物が存在すると言われています。日本の人口の約7倍強の微生物が耳かき1杯分の中にひしめきあっているわけですから、大変な人口微生物密度(笑)です。これら微生物は粘液状の物質を分泌し、お互いを結合しバイオフィルムという膜を形成して歯の表面や歯と歯ぐきの境目の溝などにこびりついています。
微生物によって形成された膜=バイオフィルムは粘液で接着面に強固に付着するため取れにくく、表面は糖衣などで覆われているため、その下の微生物の増殖に格好の温床となります。身近な例では、排水溝のヌメリや使用後洗い桶で放置された食器のヌルヌルなどがバイオフィルムです。バイオフィルムに抗菌剤を表面から作用させても底には届きにくいため、抗菌剤のみでバイオフィルムを除去するためには強い抗菌剤を大量に使用する必要があります。しかし人体でこの様なことをすると人体の細胞もダメージを受けるため、現実的ではありません。したがってバイオフィルムで覆われた歯垢を洗口剤やうがい薬だけで除去する事は無理で、主として機械的に除去する必要があるのです。汚れた食器を洗剤を溶かした水に浸け置きするだけでは完全にはキレイにならないのと同じ理屈です。
PMTC - 歯をピカピカに、歯ぐきをツルツルにして虫歯や歯周病、口臭も予防!
機械的に除去するしかないバイオフィルムですが、歯ブラシによる歯磨きだけで除去することは困難です。歯と歯の間やかみ合わせの溝、歯と歯ぐきの境目の溝、かぶせ物や詰め物の境界部分などは磨きにくく、どうしても磨き残しやすい箇所です。磨き残したバイオフィルムは増殖し、場合によっては歯石になったりします。また、タバコやコーヒー、お茶などによる着色も歯磨きでは完全に除去できません。そこで歯科医師や歯科衛生士(Professional)が、機械的に(Mechanical )歯(Tooth)にこびりついたバイオフィルムを清掃(Cleaning)するPMTCという手法によってバイオフィルムのさらなる除去を行います。
たとえば車を洗車する場合、まずボディや窓についた泥、ホコリ、水アカなどの汚れをゴシゴシ洗い流します。そしてきれいに水分をふきとった後、雨をはじいたり、汚れがつきにくくするためにワックスをかけます。PMTCでは仕上げとして、ワックスのかわりにフッ素を歯の表面にコーティングし、バイオフィルムがつきにくい状態にします。車にワックスを塗る前に洗車をして表面をきれいにしておくのと同様に、歯にフッ素塗布をする場合は、事前にPMTCによってバイオフィルムを除去し、直接歯や歯とはぐきの境目の溝ににフッ素が行き渡るようにするとより効果的です。
1.口腔内の診査
2. プラークバイオフィルムや歯石の付着状況を確認していただきます(ブラッシングの参考に)
3.ヤニ・茶渋取り専用のマシーン、超音波スケーラーや専用の薬剤、ブラシなどを用いて全歯を丁寧に清掃
4.清掃に使用した薬剤などを綺麗に洗浄
5.フッ素塗布
所要時間は約30分程度となります。PMTCは保険適用外ですので自費になります。
乳歯は永久歯に比べ、表面のエナメル質が薄く、その結晶も未熟です。したがってバイオフィルムの除去ができていないと、最短3ヶ月ほどで新しい虫歯ができます。そこで大人のPMTCを子供にも応用し、虫歯になりにくい歯にします。また、子供さんの歯がピカピカでキレイだと見た目も良くて子供さん自身も喜びますよね。ブクブクうがいのできる3才〜高校生くらいまでが「こどもの歯のクリーニング」の適用期間となります。最低半年に1度程度のPMTC「こどもの歯のクリーニング」をお勧めします。